雨宿り

Presented by なばり みずき
illustration by 桃瀬玲 & 大槻みつ様



 突然降り出した雨は叩き付けるような勢いで、望美はリズヴァーンと共に近くの木の下に避難した。
「すごい雨ですね」
 望美が暗雲が立ちこめる空を見上げて呟く。
 山の天気は変わりやすいと言うけれど、暗くなってから降り出すまでは本当にあっという間だった。
「神子、もう少しこちらに来なさい」
「え、でも……」
「そこでは濡れるだろう」
「……はい」
 遠慮がちに頷きはしたものの、なんとなく気恥ずかしい。
 結局、望美はある程度の距離を保ったまま近づくことが出来ずにいた。
「神子」
「だって、あんまりそっちに行ったら、今度は先生が濡れちゃいますよ」
 樹は比較的大きめで、一人くらいなら普通に雨宿りできる程度の枝振りではある。けれど二人で雨宿りするには少し手狭な感じだ。
「私は濡れたところで構わない。だが、お前が気にするのならば……」
 リズヴァーンはそう言うと、望美の肩に手を回し、ぐいっと自分の方へと引き寄せた。
 急に詰まった距離と、大きくて温かな手、そして何より力強い腕に抱かれている自分を意識して、望美は鼓動が早くなるのを感じた。
 普段は寡黙なリズヴァーンだからこそ、こういう風に抱き寄せられるのは、何だかすごく特別なことのような気がする。
「先生……」
 呼び掛ける声が掠れてしまった。
 変に思われなかっただろうかと思いながら彼を見上げる。
 自分を見つめる瞳が優しく和んだのを見て、彼女は勇気を出してその胸元に頭を預けた。
 抱き寄せてくれている腕が温かい。
 その温もりは、確かに彼がここにいて、生きているのだと教えてくれる。
「神子、大丈夫か?」
「はい。先生こそ大丈夫ですか?」
「私は大丈夫だ」
 このまま、雨が止まなければいいのに。
 そんなこと叶わないのは百も承知だったけれど。
 せめてもう少し――もう少しだけ、こうしていたい。
 力強い腕に抱かれながら、望美はそっと目を閉じた。








絵チャット企画第1弾。
Suna 芥の大槻さんと、当サイトの準メンバー・桃瀬ちゃんの3人で絵チャットをしながら書いた代物。
イラストはリズ先生が大槻さんで、望美が桃瀬ちゃんです。
絵も描けないくせに絵チャットに参加させてもらったなばりは、
二人の素晴らしいコラボに見惚れつつ、妄想を大暴走させながら書きました。
その割に甘さ控えめでどうしようもないのは、私も初めてで緊張していた所為でしょう(言い訳)
あまりにあまりな出来だったので、チャット後に加筆修正しました。

Go Back