おさななじみ

Presented by なばり みずき
illustration by 桃瀬 玲



(ずるいなあ)
 隣に並んでつくづく思う。
 産まれた時からお隣さんで、ずっと一緒に育ってきた幼馴染み。
 誕生日こそ差はあるけれど、同い年の兄弟みたいに思っていた。
 どちらが上とかそういうのはない、全然似てない双子のような存在だった。
 懐が広くて頼りになるかと思えば、時々すごく子供っぽい人。
 それなのに……。
「ずるいなあ」
「ん? 何か言ったか?」
「……別に」
 望美は少しだけ唇を尖らせて言い、足元の小石を軽く蹴る。
 自分の知っていた頃より少しだけ背が伸びた。
 肩幅も背中も広くなって、ふとした時に見せる表情などはすっかり大人の男の人だ。
 ずっと一緒に歩いてきたのに、いきなり置いてけぼりを食ってしまったような気がしてたまらなく悔しい。
「そんな顔すんなよ」
 こちらが何を思っているのか全て見透かすように苦笑して、将臣は望美の額を指先で軽く弾いた。
 小さい頃からの変わらないやりとり。
 けれど、今の彼には大人の優しさが見え隠れしている。
 ねえ、置いていかないで。
 一人で大人にならないで。
 ずっと変わらずにいられるなんて思ってはいないけれど、せめてあともう少しだけこのままでいさせてほしい。
「だから、そんな顔すんなって」
 将臣はふっと笑みを消すと、少しだけ痛そうに顔を歪めた。
「まさ……」
「年を食ったのは俺の方のはずなのに……何だかお前の方がずっと大人になっちまったみたいだな」
 吐き出すような言葉に胸が締めつけられる。
 そう、この世界で体験した様々な出来事と、幾度にものぼる時空跳躍で望美自身も変わったのだ。
 それなのに、彼にだけ変わらないでいてほしいと思うのはあまりに勝手かもしれない。
 望美はまっすぐに大好きな幼馴染みを見上げると、
「へへ、ちょっと感傷的になっちゃった」
 少しだけ無理して笑顔を作った。
 それを見て、将臣もぎこちなく口の端を吊り上げる。
 空元気の出し方までそっくりな自分達が何だかちょっとおかしい。
 彼も同じことを思ったのだろう、二人して顔を見合わせて、それから小さく吹き出した。
「ねえ将臣くん、手、繋ごう?」
 子供の頃、そうしていたように。
 言外にそう含ませた望美の意図を察したかのように、将臣はふっと目元を和ませて手を握った。
 絡めた指先は子供の頃のそれとはかけ離れていたけれど、伝わってくる熱は変わらない。
 ずっと、こんな時間が続けばいいのにね。
 叶わない思いを胸に、二人は暫く互いの手を握りあっていた。











原稿の合間に、息抜きとして書いた代物です。
将臣くんは大好きだけど、絶対にネタが出て来ないだろうから書けないと思ってたんで
自分でも不意打ち食らった気分でびっくり(笑)
この掌編だけだとあまりに短くて見映え悪いなあ……ということで
桃瀬ちゃんに頼んでカットを付けてもらいました。

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