サンプル1(眠れぬ夜は誰のせい?) Presented by Suzume
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「ここ……」 「ここは、俺の部屋。あんたは今日はここで俺と寝てた」 まだどこかぼんやりしているアリスに説明してやったら、彼女は徐々に状況を思い出したらしく、得心したように頷いた。 「魘されてたみたいだけど、悪い夢でも見たのか?」 何の気なしに聞いた彼に、アリスははっとしたように息を飲んだ。頼りなく瞳を揺らして俯く様は叱られた子供のようだ。 エリオットは何だか小さな子供を苛めてしまったような気分になって、宥めるように頭を撫でてやった。 「まぁ、そういうときもあるよな」 彼自身は夢に魘されるようなことは滅多にないが、アリスは自分と違って繊細そうだから、きっとそういうこともあるのだろう。 そう思って言ったのだが、彼女は唇を引き結んでふるふるっと首を振った。 「ん?」 「悪い夢なんて見てないわ」 言い訳がましくそんなことを言われても、実際に魘されていたのだから説得力はない。 「んじゃ、怖い夢とか?」 「怖い夢でもない。そういう……悪い夢じゃないの。悪い夢なんかであるはずないわ。だって……」 エリオットの言葉に反論の言葉を口にしたアリスだったが、賢い彼女は自分の台詞がいかに言い訳じみているか解ってはいるらしく、語尾はどんどん小さくなって消えた。 |
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