サンプル1(あなたが好きだから)

Presented by なばり みずき

「な……っ」
 思わず顔が赤くなった。
「そうやって、むやみやたらと人の心を覗き見るのはやめてよね!」
「おや、図星か。私は今に限っては君の心を盗み見たりしていないよ。もちろん思考が流れ込んできたわけでもない。俗に言う『顔に書いてある』というやつだ。グレイのことを考えている時の君は、考えていることが全て表に出ていて実に判りやすいからね」
「……〜〜〜〜っ」
 にんまり笑って言うナイトメアに返す言葉が見つからず、アリスは唇を噛みしめた。
 確かに、もし彼が心を読んでいたのだとしたら、自分への評価に対してもっと文句なり何なり言うだろう。それがないということは、即ち言葉通り、アリスの心を覗き見たわけではないというのにほかならない。そしてそれは『グレイのことを考えている時のアリスは思っていることが全て表に出ている』ということをも証明しているということだ。
(は、恥ずかしすぎるわ……)
 アリスは火照った頬を押さえて低く唸った。



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