サンプル1(孔明×花本「恋初め」より「手探りの恋」) Presented by Suzume
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「普通の男なら、ここで流されるところだよなぁ……」 思わずそんな独白を漏らして、孔明は内心でがくりと肩を落とした。 今は昼で、たとえば花の容態を案じた芙蓉や玄徳が見舞いに訪れる可能性も否めない。 それに何より彼女は軽傷とはいえ怪我人で、無理を強いることができる状況でもない。 ここは我慢のしどころだ。 呪文のように心の中で思い留まるための理由を並べ立て、彼は何とか決壊しかけた理性を築き直した。我ながら涙ぐましいまでの我慢強さだ。 「師匠?」 きょとんっ、と小首を傾げる花に悪気などといったものは微塵も見受けられない。ただ無邪気に、微妙な表情以外の反応を見せないこちらを窺っている。 孔明は深い溜息を漏らして、彼女を抱く腕に力を込めた。華奢な身体は抵抗することなくこちらに身を任せてくる。その素直さがまたこちらの情欲を煽り、孔明は何だか泣きたくなってきた。 「君が故意にやってるわけじゃないってのは、いい加減ボクも解ってるけどさ……頼むから、もうちょっと警戒心を持ってくれないかな」 「はい?」 「つまり、そういう可愛いことを言われたら、普通の男はころっと雰囲気に流されちゃうってこと。相手がボクじゃなきゃ、今頃君はこの寝台の上に押し倒されてるところだよ」 子供相手でもないのに、どうしてこんなことを一から説明してやらなければならないんだろう。 いっそのことこのまま流されてしまった方がお互いのために良かったんじゃないか、そうしたら花だって少しは危機感というものを学んだかもしれない。 と、そこまで考えたところで、彼女は思いもよらない発言をしてのけた。 「師匠は普通の男の人じゃないんですか?」 「っ……」 これにはさすがの孔明も脱力せざるを得なかった。 自分がどれほどの気力を動員して堪えているか、この少女は欠片ほども理解していない。 そのことが妙に腹立たしくて、反駁するべく口を開きかけた孔明だったが、それよりも花が口を開いた方が半拍ほど速かった。 「私は、孔明さんにだったら、その……そういうことをされても良いんですけど……」 |
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